近隣の飲んべえ達が集う飲み屋街として有名な立石の中で、親の代から何十年にも渡って続いている日本舞踊の教室があります。
古典芸能である日本舞踊の流派の1つである花柳流の花柳日夏舞踊稽古場は、下町ならではの人情味に溢れた和気藹々とした教室です。今回は主宰の花柳日夏先生にお話を聞きました。
立石で親の代から長く続く日本舞踊教室
── まず先生ご自身についてお聞かせください。日本舞踊を始めたきっかけは何ですか?
日夏先生(以下省略):うちは母が日本舞踊の師匠をしてまして、私が物心ついた時からお稽古場がありました。お稽古場にご近所の小さなお子さんが何十人も集ってお稽古してらしたんです。そんな中で生まれましたので、必然的に気付いたらお扇子を持って踊っていたというのが、正直なところです。
── 幼少から舞踊家として活動していく中でお教室の先生になろうと思ったのは何故ですか。
なろうと思ったというよりも、照之(日夏先生の母)がだんだん高齢になってまいりました。お稽古をつけるというのは体力も気力も必要なものですから、年齢的にだんだん難しくなってきました。
そのサポートすることから、自分がメインになっていきました。
── 立石ならではの良さはありますか。
私は生まれ育ったのが立石なので、結局ずっと母が立石に根付いてお稽古をしてきました。
だからこの街を大切にしたいですね。
やはり下町ならではの人情と言いましょうか、お弟子さん達も和気藹々としています。私も、お友達のように娘のように孫のように接しています。
もちろん、古典芸能である日本舞踊を学ぶにあたって、昔からあるルールや礼儀作法などを守ったりすることは大切です。お稽古の間は厳しくすることもあるかもしれませんが、お稽古を離れたら、あまり気取らずに何でも相談できるお姉さんや母のような存在だと思っていただきたいです。
実はお得な日本舞踊レッスン
── 古典芸能は金銭的に敷居が高いという人もいると思いますが、どうでしょうか。
確かに日本舞踊を習うのは、とてもお金がかかる(月々の月謝や発表会費用等)と心配する方が多いです。ですがお稽古事ですからバレエでもバイオリンでもお月謝は必要でしょ。
それに日本舞踊は他のお稽古事より安いかもしれません。というのも、日本舞踊はマンツーマンで教えます。グループレッスンではありません。
日本舞踊のお稽古は個人的に一人一人に合わせて丁寧に掘り下げて教えていきます。
30分なら30分、先生がその方のためだけに、その方の技量にあったお稽古をするわけです。そう考えるととてもリーズナブルな習い事です。
── 人によって曲目を変え、個人にお稽古をつけることは大変ですよね 。
やはりこちらに引き出しがたくさんないといけないことですね。
グローバル社会で日本舞踊を学ぶということ
── 教室を見学して、皆さん流れるような汗をかいているので驚きました!
日本舞踊っていうと、とても静かにただ「チントンシャン♪」とういう形でやってることを想像する方も多いと思うのです。けれど、実際のお稽古は全身運動です。
覚えなければいけないので脳も使いますよね。それこそ眼の使い方、指先、足もとの裁き、全部に神経を行き届かせなければいけません。そういうところまで極めようと思うと、ほんとうに奥が深い世界です。
── 全身運動ということですが、どんな方に習って欲しいですか。
誰が適している適していないは絶対にありません。どなたでも気軽にお稽古していただきたいな、というのが本音です。
特に思うのがこれから(今コロナで難しいですけれども)、グローバルな社会になっていきますよね。
そうすると、海外の方が日本にいらしたりします。海外の方は、自国の文化芸能を発表できる方が凄く多いと思うんです。
ですが、日本人が逆に海外に行きまして、現地の方々に、「日本の文化であなたは何ができますか?」「着物を自分で着られるんですか?」と言われた時に、あまりにも出来る人達のパーセンテージが少ないのではないかと思うのです。
海外のお友達ができた時、「日本の文化を教えて欲しい。」と言われて、 何もわからないことも多いのではないでしょうか。日本文化を学ぶ入り口として、自分のお家の周りにお稽古場があったら、気軽に見学に行ってみて欲しいです。
浴衣ぐらいはせめて自分で着たい、ぐらいの気持ちで日本舞踊を初めるのもいいのではないでしょうか。
お辞儀をはじめ立ち居降る舞いをしっかり学べる
── 浴衣の着方をはじめ、和室での振舞いなど、一から教えていただけるのですか。
そうですね。
例えば、土下座とお辞儀は違います。
これは所作でお教えしないといけないと思うのですが、土下座というのは本当に謝る ことですよね。
例えばおでこを地面にこすりつけて土下座するわけでしょ。
やはり日本の綺麗なお辞儀というのは、まず姿勢から違います。
日本舞踊のお稽古においてお辞儀は、これから私が皆様の前で踊らせて頂きます、のご挨拶。
和室に入室する際に綺麗にお辞儀ができるだけで素晴らしい人だなって思います。
所作を知る方と知らない方では自ずから立ち居振る舞いが違ってくると思います。
お辞儀=土下座だとは思わないでください。
所作を知り、礼を尽くすということ、美しくお辞儀ができるということ、が大切だと思います。
土下座は美しくないのです。
先生やお弟子さんたちの踊りを見ることができる機会も!
── 発表会など踊りを見る機会はありますか。
本ざらいと言うかつらやお衣装をつけ、立派な劇場をお借りして、踊りの会をする時があります。
色々なプロの方の手をお借りし、何十人にも及ぶたくさんのスタッフさんに動いていただきます。
準備も費用もかかりますが、「お稽古して、1度でいいからこういう大舞台に立ってみたい」 と思う方はご参加いただけます。
でも、「私は浴衣だけ綺麗に着らればいいから。」「浴衣を着た時にちょっと綺麗に歩けるようになりたい。」という方は、大きな舞台に出たり、お名取さん(流派の入った芸名がある人)になる必要はないんです。個人個人の思いでお稽古をすることができます。
通常ならば、年に2回、青砥と浅草で発表会を行う花柳日夏舞踊稽古場。
浅草見番では初春に「舞初め」、夏に葛飾区青戸エポックホールにて「浴衣浚い」
を入場無料にて開催します。
また、2021年12月に本ざらい(衣装やお化粧をしっかりした大規模な発表会)を予定しておりますが、コロナ等の情勢により予定変更の可能性があります。
発表会などの新情報はHPをご覧ください。
── これからの展望やアピールをお願いします。
今どんな業種でも展望を持つということが難しい時代であるとは思います。
お弟子さんが増えることもありがたいのかもしれませんが、
今来ていただいているお弟子さんたちが、健康でずっと楽しくお稽古ができる、ということがまず第一だと思います。
健康管理のために、自分の免疫力をアップするために、続けられる限りお稽古を続けていただきたいな、ということが一番です。来るといつも笑顔になれるというお稽古場を目指しています。
そのためには、自分がまわりを笑顔にする存在になっていないといけないと思います。
── お稽古を見学してみて、本当に皆さん仲が良さそうでした!
時々お食事会をしたりそういった交流の場も設けています。まず、お稽古事というのは楽しくなかったら続かない。踊りが楽しいって気持ちがないとなかなか難しいですよね。
今日もお稽古だし楽しみ!って思わないと続かないでしょ!!!
── 楽しくお稽古ができ日本の美しい所作が身に付く教室。新しいことも必要ですが、昔からの文化を学び伝えて行くことも大切だなと感じました。
本日はありがとうございました。
詳細情報・アクセス
住所 | 東京都葛飾区立石8-16-15 |
電話番号 | 090-9107-5518 |
最寄駅 | 京成立石 |
営業日 | 毎週火・土曜日(現在はコロナの関係で土曜日のみ) |
ウェブサイト | http://h-hinatsu.com/smartphone_index.html |